依存症について
依存症
― 孤立を防ぎ、回復へのステップをともに歩む ―
「体に悪いとわかっているのに、お酒の量が減らせない」 「ゲームやインターネットに没頭して、昼夜逆転している」 「家族のお金を勝手に使ってギャンブルをしてしまう」
こうした状態は、「意志が弱いから」ではありません。脳の報酬系と呼ばれる回路が変化し、コントロールが効かなくなってしまう「依存症」という病気です。
本人が一番苦しんでいても、「やめられない自分」を責めて孤立しがちです。適切な医療と支援につながることで、回復への道が開けます。
🩺 依存症の主な種類
・物質への依存
アルコール、市販薬(オーバードーズ)、処方薬、違法薬物など
・行動への依存
動への依存ゲーム、インターネット、ギャンブル、買い物など
最初は「ストレス発散」や「楽しみ」だったものが、次第にそれなしでは生活できなくなり、健康や人間関係、仕事などに深刻な影響を及ぼします。
🌿 当院でできること
・医師による身体的
・精神的な状態の評価
・離脱症状(禁断症状)や、飲酒欲求を和らげるお薬の処方
・不眠、うつ状態など、依存の背景にある心の問題への治療
・ハームリダクション(被害低減)の視点に立った、無理のない目標設定
・自助グループや専門医療機関、相談支援センターなどとの連携
🚗 訪問診療のメリット
依存症の方は、「怒られるのではないか」「否認(自分は病気ではないという思い)」などの理由から、医療機関への受診のハードルが非常に高いのが特徴です。 私たちがご自宅へ伺うことで、まずは「安心できる関係性」を築き、ご本人の生活環境(空き瓶の散乱状態やゲームの環境など)を把握しながら、少しずつ治療への意欲を育むサポートが可能です。
🌈 ご家族様、支援者様へ
依存症は「家族を巻き込む病気」とも言われます。借金の肩代わりや、トラブルの尻ぬぐいなど、良かれと思ってしている対応(イネイブリング)が、結果的に依存を長引かせてしまうこともあります。 ご本人が治療を拒否している段階でも、まずはご家族様からのご相談を受け付けています。ご家族が正しい知識を持ち、ご自身の心身を守ることが、回復への第一歩です。
ご家族からのご相談も。生活の場から始める無理のない治療
依存症の治療は、「受診のハードルが高い」ことが最大の壁になります。本人が治療を拒否している段階からでも、まずはご家族様からのご相談を承っております。ご自宅へ伺うさくらひだまり訪問クリニックの訪問診療なら、病院という非日常の空間ではなく、生活の場から少しずつ信頼関係を築くことができます。決して「意志が弱いから」とご自身やご家族を責めないでください。孤立から抜け出し、回復への第一歩を一緒に踏み出しましょう。
【依存症の概要】
1. 依存症の概要と主な種類
「意志が弱いからやめられない」「だらしない性格だからだ」と誤解されがちですが、依存症は決して性格の問題ではありません。特定の物質の摂取や行動を繰り返すうちに、脳内の「報酬系」と呼ばれる快楽を感じる神経回路が変化し、自分の意志ではコントロールができなくなる「脳の病気」です。
臨床現場で多く見られる依存症は、大きく「物質への依存」と「行動への依存」の2つに分類されます。
| 分類 | 主な症状と特徴 |
| アルコール依存症 | お酒を飲む量や時間、状況をコントロールできなくなる状態です。アルコールが切れると手が震えたり、発汗やイライラが生じる「離脱症状(禁断症状)」が現れ、それを抑えるためにまた飲んでしまう(連続飲酒)という悪循環に陥ります。 |
| 市販薬・処方薬依存(オーバードーズ) | 咳止めや風邪薬などの市販薬(OTC医薬品)、あるいは睡眠薬や抗不安薬などの処方薬を、決められた用量を大幅に超えて大量摂取(OD)してしまう状態です。辛い現実や精神的な苦痛から逃れるための「自己治療」として始まり、依存が形成されるケースが急増しています。 |
| 違法薬物依存 | 大麻、覚醒剤、危険ドラッグなどの使用による依存です。強い渇望感と耐性(同じ効果を得るために量が増えていくこと)が生じ、心身や社会生活を完全に破壊してしまいます。 |
| ゲーム・インターネット障害(行動への依存) | ゲームやインターネットに没頭するあまり、昼夜逆転し、学業や仕事、家庭生活など日常の優先順位が著しく低下する状態です。WHO(世界保健機関)でも「ゲーム障害」として正式な精神疾患に認定されています。 |
| ギャンブル等依存症 | パチンコ、競馬、競艇などに対する依存です。借金を繰り返してでもギャンブル衝動を抑えられず、家族を巻き込んだ深刻な経済的・関係的トラブルに発展します。 |
2. 検査と診断のプロセス
依存症の診断と治療において最も難しいのは、ご本人が「自分は病気ではない、いつでもやめられる」と問題を過小評価する「否認」という心理的メカニズムが働く点です。そのため、客観的なアセスメントが極めて重要になります。
① 医療面接(問診)と生活状況の把握
ご本人の同意を得た上で、可能な限りご家族様からもお話を伺い、生活の実態を把握します。
・使用と行動の頻度、量、期間
・「やめようとしたが、やめられなかった」経験の有無
・依存によって生じている生活上の問題(健康被害、借金、欠勤、家族関係の悪化など)
・離脱症状(イライラ、不眠、手の震えなど)の有無
② 身体的・精神的アセスメント(重複障害の確認)
依存症の背後には、別の病気が隠れていることが少なくありません。
・身体的評価
アルコールや薬物による肝機能障害、栄養失調、糖尿病などの身体的合併症がないか、血液検査等で評価します(必要に応じて地域の一般内科等と連携します)。
・精神疾患の鑑別
発達障害(ADHDやASD)、うつ病、双極性障害、社交不安症などの精神疾患による「生きづらさ」を紛らわすために依存行為に走っていないか、専門医が慎重に見極めます。
3. 専門的な治療法と処方薬
依存症の治療は、単に「対象から引き離す」だけではなく、「依存対象に頼らなくても生きていける生活の再構築」を目指します。
① 薬物療法(渇望のコントロールと合併症治療)
依存症そのものを完全に治す「魔法の薬」はありませんが、回復を強力にサポートするお薬があります。
アルコール依存症の治療薬
・断酒補助薬(アカンプロサート/商品名:レグテクト)
脳内の神経伝達物質のバランスを整え、「お酒を飲みたい」という強い欲求(渇望)そのものを抑えます。
・飲酒量低減薬(ナルメフェン/商品名:セリンクロ)
飲酒の1〜2時間前に服用することで、飲酒による快感をブロックし、お酒の量を減らす(ハームリダクション)目的で使用されます。
・抗酒薬(シアナミド、ノックビン)
服用後にお酒を飲むと、激しい動悸や吐き気をもたらすことで物理的に飲酒を防ぎます。
・合併疾患の治療
うつ症状や強い不安感、不眠がある場合は、依存性のない抗うつ薬(SSRIなど)や睡眠薬を用いて、心の土台を安定させます。
② 心理社会的治療・環境へのアプローチ
・認知行動療法(CBT)
自分がどのような状況(ストレス、人間関係、特定の場所)で依存対象に手を出してしまうのか「引き金(トリガー)」を分析し、それに代わる健康的な対処法(コーピング)を身につけます。
・自助グループへの参加支援
AA(アルコホーリクス・アノニマス)、断酒会、家族会など、同じ境遇の仲間と体験を共有することは、孤立を防ぎ、回復を維持するための最強の処方箋となります。
4. 療養上の注意とご家族のサポート(イネイブリングの防止)
依存症は「家族を巻き込む病気」とも言われます。ご本人の回復には、ご家族の正しい理解と対応が不可欠です。
① 依存の引き金「HALT」を避ける
再発の危険が高まる4つの状態「Hungry(空腹)」「Angry(怒り)」「Lonely(孤独)」「Tired(疲労)」を避けるよう、規則正しい生活リズムと十分な休息を心がけます。
② 「イネイブリング」に気づき、やめる
ご家族が良かれと思ってしてしまう以下の行動は「イネイブリング(支え合いという名の依存助長)」と呼ばれ、結果的に本人が病気と向き合う機会を奪ってしまいます。
・本人が作った借金を肩代わりする。
・二日酔いで会社を休む際、家族が「風邪をひきました」と嘘の電話を入れる。
・散らかった空き瓶やゴミを、本人の代わりに片付ける。
まずは「本人の問題は本人に責任を取らせる」という明確な境界線を引くことが重要です。
③ 訪問診療による「生活の場」での介入
依存症の方、特に昼夜逆転したゲーム依存や、外出困難な市販薬依存(OD)の方は、医療機関へ通院すること自体が極めて困難です。
当院では、精神科医が直接ご自宅へ伺うことで、空き瓶の量やゲーム環境など「実際の生活環境」を拝見し、ご本人が安心できる居場所で少しずつ信頼関係を築きながら治療へ繋げていきます。
孤立から抜け出し、回復への第一歩をともに
依存症の根底にあるのは「強烈な孤独感」と「生きづらさ」です。本人が一番苦しんでいるにもかかわらず、周囲に嘘をつき、人間関係を壊し、やがて誰からも助けを求められなくなってしまいます。
「意志が弱いからだ」とご自身を責めたり、ご家族だけで問題を抱え込んで隠そうとする必要はありません。依存症は適切な医療とサポートに繋がれば、必ず回復できる病気です。
通院のハードルが高い場合は、まずはご家族様からのご相談だけでも構いません。私たちがご自宅へお伺いし、共に悩み、回復への無理のない第一歩を全力でサポートいたします。
